屋根カバー工法について
屋根を大掛かりに修理する方法として「葺き替え」「カバー工法」「塗装」などの工法があります。
その中でもカバー工法は葺き替えよりも手軽に行うことができる工事として行われています。
そこでここでは屋根のカバー工法の特徴やメリット、デメリットなどについて紹介していきたいと思います。
屋根カバー工法とはどうして普及してきたのか
近年カバー工法という補修方法が増えてきていますが、これはどのような工法なのでしょうか。
まずカバー工法という名前ですが、これは既存の屋根の上に新しく屋根を被せて作っていくというところから来ています。
その張り方から「重ね張り」と呼ばれることもあります。
既存の屋根材を撤去することなく屋根を新しくできる方法として近年人気となってきています。
その歴史はそれほど古いわけではなく、補修工事や屋根のリフォーム工事の種類の中でも比較的最近できた手法です。
全面的に屋根を新しいものに作り変えてしまう「葺き替え」や表面の塗装が薄くなった際に塗装をやり直す「塗装メンテナンス」などと比べると一般的な知名度も低いということもあって、すべての補修業者が取り扱っている方法ではないという工法でもあります。
カバー工法とはどうやって行われる工法なのか
屋根のカバー工法とは既存の古い屋根材を撤去、処分をすることなく、その既存の屋根から新しい下地と屋根材を使って屋根を作成していくという方法の補修工事、リフォーム工事を意味しています。
既存の屋根材を撤去や作業を行う必要がないために手間がかかることがない、ゴミやホコリがでにくい、騒音もでにくいというメリットがあることで人気となっています。
ただ、すべてを新しいものに入れ替える葺き替え工事と比べると作業の方法がイメージしにくいという部分があるかもしれません。
そこでここではカバー工法をどのように行っていくのかについて述べていきます。
既存の屋根の棟板金や貫板を一度外す
カバー工法を行う際には既存の屋根に設置されている棟板金や貫板を一度外していきます。
棟板金とは屋根の頂上の棟部分に設置されている板金であり、屋根材を固定する重要な役割を果たしています。
ただ屋根の頂上部分にあることで雨や紫外線の影響を受けやすく劣化しやすい部位であるというのも間違いありません。
また新しい屋根が完成したら当然棟板金が必要となるのですが、その時には新しい棟板金を使うのが一般的です。
既存の屋根材の上に下地を作っていく
棟板金を外したら既存の古い屋根材の上に新しい下地を作成していくこととなります。
新しいルーフィングを敷いて下地を完成させていきます。
このルーフィングという防水紙を設置して雨水が屋根裏に侵入していくことを防止するのです。
こうしてルーフィングを新しく作っていくことで新しく作る上側の屋根の防水性を確保していくこととなります。
下地の上に新しい屋根材を設置していく
ルーフィングを設置して下地が完成したら、その下地の上に新しい屋根で使用する屋根材を設置して固定していくこととなります。
この時、カバー工法では軽い屋根材である金属屋根を使用するのが一般的です。
カバー工法では屋根を2つ作ることとなるためにどうしても屋根が重くなってしまうこととなります。
そのために瓦屋根やスレート屋根のような重い屋根材は使用することができないのです。
エスジーエル鋼板やガルバリウム鋼板のような性能の高い金属屋根を使用することで屋根の軽量化をはかっているのです。
新しい屋根材が設置できたら棟板金、貫板を設置して固定していく
新しい屋根材が施工できたら、その棟部分に新しい貫板を設置して、そこに棟板金を固定していきます。
貫板は棟板金を固定するために重要な部位となるのですが、昔は木製のものが多く使われていました。
木製の貫板は扱いやすい素材ではあるのですが、どうしても腐食してしまうという弱点がありました。
そこで最近では腐食しにくい素材である樹脂製のものを使うことが増えてきています。
この貫板を固定した上で、その貫板に棟板金を被せてビスや釘を使って固定していくこととなります。
棟板金をしっかりと固定することで屋根全体の安定化が可能となります。
ウェルスチールでは基本的に樹脂製の「タフモック」をお客様にオススメしております。
棟板金の取り付け、シール処理を行う
屋根の上でどこかに余分な隙間があるとそこから雨水が侵入していってしまうこととなり、それが雨漏りの原因となっていきます。
そこで板金の余分な隙間から水が浸入しないように周囲をコーキング処理していきます。
ただ、このコーキング処理をする際に内部に入り込んだ雨水や湿気を適切に外部に排出するための隙間までコーキングで埋めてしまうと、換気ができなくなってしまうことで屋根の内部に水や湿気が溜まってしまい、それが腐食やカビの発生へとつながってしまいますし、雨漏りの原因にもなっていくこととなっていきます。
換気をするために必要な隙間についてはコーキングした後で「縁切り」と呼ばれる切れ目を入れることによって空気の通り道を作ることが必要です。
このような順序でカバー工法を行っていきます。
屋根カバー工法を行うメリットとはどういったものか
カバー工法の利用が増えているというのには葺き替えや塗装メンテンナンスを行うのとはまた違ったメリットがあるためでもあります。
そこでここではカバー工法を実施することによって発生するメリットを述べていきます。
既存の屋根材を撤去や処分しないので費用を抑えられるし、近隣トラブルも減る
葺き替え工事を行う際には既存の古い屋根材や下地をすべて撤去して処分するという作業が必要となります。
この撤去作業は手間や時間がかかるだけでなく、撤去する際にどうしても騒音やゴミ、ホコリが出ることとなり、それが近隣住民とのトラブルに発展する場合もあります。
さらにこの時に撤去した屋根材や下地については廃材として処分する必要があるので、運搬費用や処分費用がかかることとなり、工事費用がさらに高額になる理由となっていきます。
カバー工法では古い屋根材や下地の撤去、処分を行う必要がないため、工期を短くすることが可能となりますし騒音などのトラブルも回避できることとなります。
屋根の防音性や断熱性を向上させることができる
カバー工法を行うことによって既存の屋根の上にもう一つ屋根を作ることとなります。
そのため2つの屋根ができることとなるのです。
屋根が二重に設置されることによって、大雨が降った時でも室内にその雨音が響きにくいということになりますし、夏の強い日差しについても二重の屋根がその熱を防ぐこととなります。
また二重の屋根によって気密性や保温性も向上しますので、冬の寒い日でも室内の暖かい空気を中で閉じ込めることが可能となります。
カバー工法を行う際に気を付けるべき注意点やデメリット
カバー工法は施工メリットが多い工法ではあるのですが、実際に施工する際には注意点やデメリットがある工法でもあります。
ここではそれらの注意点やデメリットを順に紹介します。
既存の屋根材や下地の劣化が激しい場合はカバー工法は施工できない
カバー工法を行おうとする時に既存の屋根材や下地の劣化が激しい、すでに室内に多くの雨漏りが起きているというような場合にはカバー工法を施工することはできません。
こういった状態にまで屋根材や下地が劣化している、室内で雨漏りがしているという状態でカバー工法を実施してしまうと屋根の内部に溜まっている湿気、水分が上に作られた屋根によって防がれてしまい、外部に排出されることができなくなって内部にこもってしまうのです。
カバー工法を実施する時点で既存の屋根の劣化がどういった状態なのか、下地が破損していないかということについて点検を行う必要があります。
業者に屋根診断を受けて点検をしてもらい、カバー工法が施工できる状態かどうかを判断してもらいましょう。
屋根材や下地の劣化がひどいと判断された場合にはカバー工法ではなく、葺き替え工事を行う必要があります。
カバー工法を行うことで屋根がどうしても重くなる
カバー工法という方法では既存の屋根材や下地を撤去しないまま、既存の屋根の上から新しい屋根を作っていくという方法です。
ということはカバー工法を行えば屋根が2つできるということになるので屋根全体の重量は増加することとなります。
近年「耐震性能」を高めるために行われている「耐震工事」では既存の屋根材を金属屋根などの軽い屋根材に交換することによって屋根を軽量化して建物の耐震性能を向上させています。
そうした屋根の軽量化が求められていることが増えている近年に屋根が重くなるカバー工法を選ぶことは矛盾していると言えるかもしれません。
実施する建物によっては雨樋の位置を調整する必要がある場合がある
カバー工法を実施すると新しい屋根の位置が元と違うこととなります。
この理由は既存の屋根の上から新しい屋根を作ることで元の位置よりも位置が高くなってしまうためです。
屋根の高さが変わることによって屋根から軒に向かって流れてくる水の位置が元の位置よりも遠くなってしまうために水を受け止める雨樋の位置調整が必要となるのです。
雨樋の位置調整を正しくしないと雨樋にうまく雨水が入らないために、水が雨樋から溢れてしまったり、雨樋に入らずに外側に流れでてしまうことがあります。
すべての建物でこの位置調整が必ず必要となるわけではありませんが、必要となる場合もあるので、慎重に雨樋の位置を確認しておきましょう。
まとめ
カバー工法は防音性を高める、断熱性を高めるといったメリットだけでなく、既存の屋根の撤去や処分が必要ないために工期を短くする、費用を抑えるというメリットもあるのですがいくつか注意しなければならない点もある工法でもあります。
実際にカバー工法を実施するのかについては業者の診断結果を参考にして判断するようにしましょう。
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