雨漏りに強い立平葺きのメリット・デメリットについて解説
屋根には素材や形状が違うものが数多くあり、それらによって屋根の特徴も違っています。
雨に強い、重量が軽いなど建物に合わせてそれらを選んでいくこととなるのですが、そうした素材の違いなどと合わせて「葺き方」「屋根材の設置の仕方」も重要となっています。
同じ屋根材でも設置の仕方を変えることで、その効果も変わってくるのです。
そこでここでは雨漏りに強いとされている「立平葺き」の詳細を紹介します。
立平葺きの葺き方と屋根材の葺き方について
立平葺きという名前が表している通りに、軒に対して屋根材が垂直になるように葺いていくという「縦葺き」になる葺き方です。
縦葺きなので屋根の棟部分から軒までが一枚の屋根材となるために途中につなぎ目ができないという良いところがある葺き方となります。
ここではまずその葺き方について具体的に述べていきます。
屋根材を屋根に設置していく際には2種類の葺き方がある
近年日本で使用されている屋根材には「瓦屋根」「金属屋根」「スレート屋根」といった素材が違う屋根材があり、扱い方が違っています。
また同じ素材の屋根材であっても製品によって適した葺き方が違うようになっています。
このうち立平葺きという葺き方は屋根材が「金属屋根」の時に使用される葺き方です。
金属屋根とは昔はトタン屋根が一般的でしたが、最近はガルバリウム鋼板、エスジーエル鋼板といった耐久性に優れた素材のものが多く使われるようになっています。
こういった金属屋根の製品は屋根の上に設置していく特に2種類の葺き方があります。
・軒に対して水平方向、横向きになるように屋根材を葺いていく「横葺き」
・軒に対して垂直方向、縦向きになるように屋根材を葺いていく「縦葺き」
といった葺き方が2種類あるのです。
葺き方の名前が示している通りに屋根材が横向きか縦向きかということで、一目で判断できるかと思います。
この縦と横という2つの葺き方のうち、立平葺きは「縦向き」に分類される葺き方となっています。
金属屋根の製品は縦長の長方形をしているのが普通なのですが、この縦長の形状の屋根材を縦向きに並べていって屋根に設置していく葺き方です。
瓦屋根を設置していく時には瓦を一枚ずつ並べて設置していくため、多くの瓦と作業時間が必要となりますが、金属屋根は大きい1枚の長方形の板を並べていくために使用する枚数自体は瓦よりも少なくなります。
立平葺きは具体的にどうやって葺くのか
立平葺きは葺き方でいうと縦葺きではありますが、その葺き方とはどのような葺き方なのでしょうか。
立平葺きは、縦向きになるように屋根材を並べて設置していく工法であり屋根の「棟」の部分から下の端である「軒」までが一枚の屋根材で一直線になるために、つなぎ目など何もさえぎる物がないという葺き方です。
水が流れていく方向につなぎ目などがないことで流れていきやすくなり排水性能が高くなる屋根となり、そのために雨漏りがしにくいと言われるのです。
屋根材は並べて固定をしていきますが、その固定の仕方には2つ種類があるため、これらについては後で述べていきます。
立平葺きに似ている「瓦棒葺き」とは
立平葺きに近い葺き方として「瓦棒葺き」と呼ばれる葺き方もあります。
外から屋根を見たときにほとんど同じような見た目となるために、素人では判断がつきにくい葺き方となっています。
瓦棒葺きという名前がついていますが、瓦を使っている葺き方ではありません。
瓦棒と呼ばれている部位は金属屋根を並べて固定するときに使用するもので、間隔をあけて設置されている木材のことです。
昔多かったトタン屋根で使われることが多かった葺き方であり、木材の芯木となる瓦棒を垂木に打ち付けて固定したうえで、金属板を折り曲げて溝を作りこの瓦棒にはめ込んでいきます。
その上から抑えをかぶせた上で釘を打って固定していきます。
固定がうまくできるということで多く使われていた工法ですが、木材でできている瓦棒が劣化、腐食していくことで固定力が低下してしまうというデメリットがありました。
トタン屋根を使うことが減ってくると同時にこの瓦棒葺きも減ってくることとなります。
立平葺きで屋根材を屋根に固定していく手段とは
屋根材を固定していく際に立平葺きでは大きく分けると2種類の固定方法があります。
上記で述べた「ハゼ葺き」という現場での手作業による方法と、「嵌合式」という事前に準備しておくという2つの方法です。
この2種類の固定の方法について紹介していきます。
✅ハゼ葺きに関して
ハゼ葺きと呼ばれる固定方法は金属板の横端の部分に折り曲げるために使う幅をもたせて、隣に並べていく金属板と合わせてとっておいた幅の部分を折り曲げて結合させて固定するという葺き方です。
このハゼ葺きは古くから日本で使われてきた固定方法であり、立平葺き自体を昔は「縦ハゼ葺き」と呼んでいたほどです。
しかしこの工法は金属屋根の端部分を適切に折り曲げることで隣の屋根材とつないで固定していくという工法ですので、職人の高い技量が必要とされる作業でもあります。
✅嵌合式に関して
嵌合式と呼ばれている方法については金属屋根の端部分に「凸部分」と「凹部分」となる部分を設置する前に準備しておいて、設置するときにはそれらを組み合わせて固定するという工法です。
職人が手作業によって金属屋根を折り曲げていく必要があるハゼ葺きと違って、事前に形作っておいた部分を屋根の上で組み合わせて設置するという工法ですので、そこまで高い技量がなくても施工することができます。
また組み合わせていくだけで固定できますので工期も短くなります。
立平葺きを利用することによって発生するメリットとは
雨漏りに強いといったメリットがあるとされる立平葺きですが、他にもいくつかのメリットが存在しています。
ここではそれらの立平葺きのメリットを順に述べます。
屋根の排水性能が非常に高い
こうした立平葺きは縦長の金属板である金属屋根の屋根材を屋根の上に順番に縦向きに設置するという縦葺き工法です。
縦葺きの特徴として棟から軒までがまっすぐ屋根材の上を通ることとなり、水平方向、横方向につなぎ目ができないのでそのつなぎ目から雨水が屋根の内側にはいっていきにくい構造となっています。
屋根に降った雨水が屋根材の上を通ってまっすぐ軒に向かって流れていくため、屋根全体が備えている排水性能が高くなっています。
排水性が高いという特徴によって雨漏りがしにくい屋根と呼ばれているのです。
腐食しにくい、工期が短い、耐久性が高い
立平葺きは瓦棒葺きとは違って木材の芯木を使わずに屋根材だけで固定していくことができるので、木材部分が腐食するということがありません。
また、使用されている屋根材は金属屋根となっていますので基本的に耐久性も高く、耐用年数も長いというメリットがあります。
このように金属屋根は耐用年数が長いことで頻繁に交換メンテナンスを行う必要がなく、コストパフォーマンスが高くできるということが期待できます。
また、立平葺きを行う際に嵌合式を採用して固定していく時には工期が短くできます。
工期が短くなればかかる費用も抑えることにつながってきます。
傾斜があまりない建物の屋根でも使用できる
それぞれの建物の屋根についてはすべての屋根が傾斜しているわけではなく、屋根によって傾斜の角度が違っています。
屋根の傾斜とは簡単にいえば屋根の傾きのことです。
この傾きのことを「勾配」と呼んでおり、勾配が急であればあるほど、激しい角度であるほど雨水は流れていきやすくなり、緩やかになるほど水は流れにくくなっていきます。
ただ立平葺きという葺き方は勾配がほとんどないような緩やかな角度の屋根であったとしても施工することができるというメリットがあります。
立平葺きのデメリットにはどんなものがあるか
メリットが多い立平葺きですが、いくつかデメリットや注意点もあります。
ここではそれらのデメリット、注意点について順に紹介していきます。
屋根が複雑な形状の場合は使用できない
シンプルな形状の屋根で多く使用される立平葺きは縦長の形状をした屋根材を屋根に縦向きにしてまっすぐ並べ、つなげて固定していく葺き方です。
こういった固定の仕方をするために形状が複雑な屋根では使用することができません。
そういった理由によって立平葺きが実際に使用されているのはシンプルな形状の切妻屋根などとなっています。
立平葺きはどのような屋根なのかによって利用できるかどうかがあるので、選びたい場合にはまずは業者に相談することをおすすめします。
金属屋根に関係するデメリットがいくつかそのまま当てはまる
立平葺きは金属屋根で利用される葺き方です。
金属屋根は軽い、耐久性が高いといったメリットもあるのですが、熱伝導率が高い、遮音性が低いといったデメリットもあります。
これはやはり「金属製の薄い板」ということが関係しており、どうしても起こってしまうものです。
また、金属製ということは錆びたり腐食したりするということもあることとなります。
もちろん屋根材の表面は塗装がされており、防水性などはすべて向上しているのですが、表面に傷があったりするとその傷部分、塗装が剥げた部分から雨水が入り込んでいき、金属部分が錆びてしまうことがあるのです。
これらの断熱性が低い、衝撃には弱い、遮音性が低い、錆びやすい、といったデメリット部分については最近の製品はかなり改善されていますが、それでも完全になくなってしまうわけではないので注意しなければならないと言えます。
まとめ
立平葺きは近年増えてきている金属屋根で多く使用される葺き方です。
シンプルな工法でありながら高い耐水性を誇るため、使いやすいとされているのです。
耐震性を高めるということで金属屋根の使用が増えていくということを考えるとさらに活躍が見込める工法だと言えるでしょう。
ウェルスチールでは一般的な横葺きの施工から、立平葺きまで、もちろん全て対応しております。
お客様の屋根の形状に沿って、適正な方法をご提案させて頂いております。