瓦屋根の劣化サインとメンテナンス方法について解説
近年屋根材としては金属屋根が増加してきており、新築の家で瓦屋根を使用することは減ってきました。
しかし日本では古くから瓦屋根を使っていたことがあり、特に伝統的な建物ではまだまだ多くの瓦屋根が多く使われています。
瓦屋根は耐用年数が長い屋根材ですが、絶対に劣化しないというものではありません。
そこでここでは瓦屋根の劣化サインとメンテナンス方法について紹介していきたいと思います。
瓦屋根の種類と耐用年数について
瓦屋根には多くの種類があり、それぞれに特徴があって耐用年数も違っています。
ここでは日本で多く使われている瓦屋根の種類と耐用年数、大まかな費用について紹介していきます。
釉薬瓦(陶器瓦)について
もっとも多く使用されており、瓦屋根のイメージとなりやすいのが「釉薬瓦(陶器瓦)」です。
主な材料は粘土であり、瓦の形を作ってその上に釉薬といわれるガラス質の薬を塗って高温で焼いて作ります。
この瓦の焼き方などが皿や茶碗といった陶器の作り方と同じということもあって「陶器瓦」と呼ばれることもあります。
瓦の表面に釉薬を塗って焼くことによって瓦の表面の色艶が良くなり耐久性も上がります。
また、瓦にどういった種類の釉薬を塗るかによって仕上がりの色も変わってきます。
さらに釉薬には「水をはじく」という特徴がありますので、雨水が瓦まで浸入しにくくする効果があります。
この釉薬瓦は一度設置すれば50年以上の耐用年数があるものも多く、瓦自体は長期間にわたってメンテナンスをする必要がないというメリットもあります。
価格については釉薬瓦はかなり値段の幅が広くなっています。
たいていの場合は1㎡あたり5000~15000円ほどとなっています。
素焼き瓦について
釉薬瓦は粘土で瓦の形を作って釉薬を塗って焼くという方法をとりますが、粘土で瓦の形を作ってそのまま焼いた瓦を「素焼き瓦」といいます。
釉薬を塗らずにそのまま焼くことで、粘土本来の色合いで仕上がることが多く、「赤色」になる場合が多くなっています。
純粋で素朴な色合いに仕上がりますので、それを好む人も多くいます。
仕上がりが赤色になるために「赤瓦」と呼ばれています。
明るい赤色になることが多いので、洋風な建物にも合いやすくなっています。
釉薬を塗らずに焼くことで軽量で耐久性も高くなりやすく、耐用年数も40~50年ほどとなっています。
釉薬を塗らないことから1㎡あたり5000~9000円ほどとなっています。
いぶし瓦について
この「いぶし瓦」は一般的な建物よりも神社仏閣などで使われることが多い伝統的な瓦です。
瓦自体の基本的な形は粘土で作成するのですが、瓦の表面に釉薬を塗ることはなく、窯の中で「いぶす」ことで完成させていきます。
いぶし方、いぶす方法、いぶす時間などによって仕上がりの色合いが違ってくるのですが、「銀色」「黒色」といった重厚感と高級感があるように仕上がるのがこの「いぶし瓦」の特徴です。
これらを変化させることによって仕上がりの色が同じ色にならないというのもいぶし瓦の特徴となっています。
この独特な色合いは窯の中でいぶしている間に瓦に付着する「炭素膜」によって決まってきます。
炭素膜は色合いが瓦の仕上がりの色が決まってくるだけでなく、雨水から瓦を守るという効果もあります。
ただ、長期間瓦を設置していることによって炭素膜が剥がれることとなりますので、耐用年数は30~60年前後となります。
いぶし瓦は釉薬瓦よりも高い値段となる場合が多く、1㎡あたり8000~18000円ほどの値段となっています。
セメント瓦とは
上記の瓦は基本的に粘土で作った瓦でしたが、セメント瓦は「セメント」「砂」「水」を混ぜて作った瓦です。
作成途中のセメントに色を混ぜて作れば、仕上がりはそのままの色の瓦になるのですが、セメント瓦を作成してから表面に塗料を塗って色を後からつけるという方法もあります。
釉薬瓦、素焼き瓦、いぶし瓦などは高温で焼くという工程がありますので、焼いている途中で「割れてしまう」「縮んでしまう」ということがどうしても起こります。
焼いている途中で割れてしまった瓦などは廃棄してしまうために無駄が発生してしまうのですが、セメント瓦は「高温で焼く」という工程がないため、無駄が発生しにくいというメリットもあります。
ただ、セメント瓦にはメリットだけではなく、いくつかのデメリットもあります。
まずセメント瓦の表面に塗っている塗料は10~20年ほどで剝がれてしまうためにメンテナンス時に塗装をし直すということが必要となります。
また、セメント瓦は陶器瓦よりも「重い」「耐久性が低い」といった特徴があるために重量面で建物に負荷をかけるだけでなく、瓦自体の破損も起こりやすいのです。
特に耐震補強の点では屋根の軽量化が進められているということもあってセメント瓦は利用が減少してきています。
モニエル瓦(コンクリート瓦)とは
セメント瓦を作成した段階で終わるのではなく、出来上がったセメント瓦の表面に「着色スラリー」という塗料を塗った瓦を「モニエル瓦(コンクリート瓦)」といいます。
「モニエル」というのはこの表面に塗る塗料を「日本モニエル株式会社」が製造していたことが関係しています。
この着色スラリーは防水性に優れているためにモニエル瓦はセメント瓦よりも防水性に優れているという特徴があります。
セメント瓦、モニエル瓦はどちらも原材料はセメントでできているために見分けにくいという特徴がありますが、断面として切り口の部分が「ギザギザしている」のがモニエル瓦、「まっすぐ」になっているのがセメント瓦となっています。
耐用年数は塗料が10~20年ほど、瓦は20~40年ほどとなっており、値段は1㎡あたり5000~9000円ほどです。
こちらもセメント瓦と同様に使用されることが減ってきています。
軽量防災瓦とは
耐震補強、耐震リフォームが増えてきている近年では「屋根の重さ」を軽くすることが「耐震性能を高める」とされるようになっています。
そうして注目されているのが「軽量防災瓦」です。
瓦屋根は基本的に「重い」というのがデメリットとなることが多いのですが、こちらは従来の瓦よりも少しだけ軽くなっているという特徴があります。
ただ、劇的に重さが変わるわけではなく、あくまでも少し軽いという程度のものです。
屋根瓦のメンテナンス方法や費用について
瓦屋根のメンテナンスや補修、補強工事を行う際にはそれぞれの瓦の種類によって大きく費用が違ってきます。
ここでは粘土瓦、セメント瓦それぞれのメンテナンス方法と費用の相場について紹介していきます。
粘土瓦のメンテナンス方法と費用について
釉薬瓦などの粘土瓦のメンテナンスをする際には大きく分けると「葺き替え」と「葺き直し」の2つの種類があります。
もちろん瓦が1枚だけ割れているといった場合はその1枚だけを交換することが可能です。
葺き替えとは屋根材をすべて入れ替えるという工事です。
既存の瓦をすべて撤去して、その上で新しい瓦を葺いていきます。
葺き替え工事を行う時には足場の組み立て費用や屋根材、人件費などに加えて撤去費用、撤去した瓦の処分費用がかかってくるために費用は高くなります。
粘土瓦以外の屋根材に交換するということも可能で、このタイミングで金属屋根などに交換するということもあります。
費用については新しい屋根材をどういったものにするかによってかかってくる費用は違ってくるのですが、たいていは100~200万円前後の費用がかかってきます。
セメント瓦などのメンテナンス方法と費用について
セメント瓦などのメンテナンスを行う際には粘土瓦と同様の「葺き替え」「葺き直し」に加えて、「塗装」といった方法があります。
塗装については既存の瓦の表面を塗装し直すというもので、どれだけの費用がかかるかは使用する塗料の種類によって変わってきます。
塗装の際にも足場の組み立てや人件費などはかかってくることに加えて塗料の代金を合わせた費用がかかることとなります。
たいていは50~80万円程度の費用となっています。
新しい瓦に交換したりする必要がないという時には塗装を選ぶのも良いでしょう。
粘土瓦とセメント瓦の一般的な耐用年数について
瓦の種類によって耐用年数が違っており、それによってメンテナンス方法や時期が変わってきます。
基本的に粘土瓦は釉薬瓦で50~100年程度、無釉瓦で30~50年ほどが耐用年数となっています。
あらゆる屋根材の中でももっとも長い耐用年数の屋根材だと言えるでしょう。
そのため瓦自体はほとんどメンテナンスを行う必要がないのですが、瓦を支えている漆喰などの耐用年数が20年ほどですので、そちらのメンテナンスは定期的に行う必要があります。
セメント瓦の耐用年数は30~40年ほどとなっており、こちらも屋根材の中では耐用年数は長い方ですが、10年を過ぎると塗装が剥げてくることがあるため、10~15年ほどで塗装メンテナンスを行う必要があります。
まとめ
瓦屋根には色々な種類があり、それぞれに特徴が違っています。
粘土瓦は耐用年数が長く、頻繁にメンテナンスを行う必要がないのですが、周囲の漆喰などの耐用年数に合わせてメンテナンスを行うと良いでしょう。
また、セメント瓦は塗装が薄くなる、剥げてくるというのがわかりやすい劣化サインとなりますので、塗装のし直しが必要となります。
ウェルスチールでおこなった瓦屋根の施工実績