瓦屋根の屋根修理に使われる漆喰について
屋根材には色々な種類があり、瓦屋根もその一つです。
瓦屋根は耐用年数が長く、日本の建物らしい屋根材として安定した人気がありますが、瓦屋根を屋根の上に固定するためには「漆喰」が必要となります。
そこでここでは瓦屋根における漆喰の役割、必要性とそのメンテナンスの方法などについて紹介していきたいと思います。
屋根に使用される漆喰について
漆喰は世界中の建築物に使用されてきた歴史ある建築材です。
日本でも古くから使われており、現在でもさまざまな建物で見ることができます。
こちらではまず漆喰がどのようにして生まれたのか、どのように使われているのかについて述べていきます。
漆喰の概要について
漆喰とは石灰石を主な原料としており、石灰石に水を加えて混ぜ合わせてできる「水酸化カルシウム」を主原料としています
水酸化カルシウムに「布海苔」「苆」「粘土」といった成分を加えていき、よく混ぜ合わせていきます。
世界中で使用されている建築材でもあり、5000年以上前から屋根、外壁など建物の多くの場所で使用されてきました。
日本では屋根の棟部分と平瓦部分にある隙間を埋めるために使用されており、瓦の下に設置されている葺き土を保護するためにも使用されています。
また、瓦の接着剤として、石材の接着剤として、外壁の塗り壁材としても使用されています。
寺院、城、伝統的家屋などで多く使われているのでそういった場所ではよく見るでしょう。
漆喰の寿命について
瓦は耐用年数が長いものが多く、陶器瓦などでは50年以上も耐えうるようなものがあります。
そのため、頻繁に交換などのメンテナンスを行う必要はないのですが、瓦の周囲に配置されている漆喰は50年ももちません。
10~20年ほど経ってくると漆喰の表面が乾燥して剥がれてきたり、バラバラと崩れてきたりするようになります。
そのため、劣化してくるタイミングに合わせてメンテナンスを行うことが求められます。
漆喰が劣化していく直接的な理由とは
漆喰はさまざまな理由によって劣化していきます。
主な理由としては以下の理由があります。
✅長期間屋根の上で雨風にさらされることで劣化する
✅屋根の上で太陽光、紫外線を受け続けることで劣化する
✅昼と夜、夏と冬などの気温差によって膨張と収縮を繰り返して劣化する
✅時間が経つことによって経年劣化する
といったことがあります。
屋根の上に配置されているということで、どうしても雨風や紫外線の影響を大きく受けることとなります。
さらに漆喰は気温差によっても劣化していきます。
夏の昼間に気温が高くなることによってわずかに膨張し、気温が下がると収縮します。
こうして膨張と収縮を繰り返していくとひび割れなどを起こしやすくなり、劣化を早めることとなります。
瓦屋根に使用される漆喰が劣化するとどうなるのか
漆喰が正常に機能していると瓦屋根をしっかりと固定していく、土台を固めるといったことが期待できるのですが、劣化してくるとそうした機能が低下していきます。
ここでは漆喰が劣化していった際に起こってくる現象について述べていきます。
棟を支える土台の土が流れ出る
棟を支える部分の漆喰が劣化して剥がれていってしまったりすることによって、土台の土が流れ出ていってしまうということがあります。
棟を支える土が流出してしまうことで棟の安定感が低下し、崩れてしまうことがあります。
棟瓦自体は寿命が30年以上あるものも多く、なかなか劣化しないのですが周囲の漆喰が劣化する、土が流れ出るということになれば崩れていってしまうこととなります。
漆喰のメンテナンスさえしっかりとできていればそういった事態を防ぐことができるので、定期的にチェックしておくと良いでしょう。
瓦がズレる、抜け落ちる
棟を支えている漆喰が劣化していくと棟に積み上げている瓦がズレる、抜け落ちるということがあります。
瓦がズレてしまうとその隙間から内部に雨水が浸入していってしまい、土を流出させたり屋根の内部にまで水が入り込むこととなります。
土が流れ出る、内部から固定力が下がるということによって瓦の固定力はさらに低下し、瓦がズレるということを繰り返すこととなるのです。
さらに土が流れ出ていく際に残っている漆喰も一緒に流してしまうという悪循環に陥ることもあります。
漆喰が劣化すると悪いループにはまっていくことがあるので注意が必要だと言えます。
最終的には棟が崩れる、雨漏りがする
漆喰が劣化していき、土が流出したり内部へと水が多く入り込んでいくと棟が崩れていく場合があります。
こうなると棟瓦の積みなおしをしていかなければならず、大規模な補修工事が必要となってきます。
時間や費用も多くかかることとなるのでできればこの前に対応したいところです。
さらに内部に雨水が多く侵入していくと、その水はルーフィング(防水シート)によって防がれることとなります。
このルーフィングが室内に水が向かわないように防いでくれるのですが、あまりにも多くの水がルーフィングにかかるようになってくるとルーフィングへの負担が大きくなり、ルーフィングの劣化が早まってしまうことになります。
ルーフィングが劣化、破損すると室内で雨漏りがする、木材が腐食していく、シロアリが発生していくということにもつながるため、ルーフィングを含めた下地補修メンテナンスを行う必要が出てきます。
漆喰が劣化してきたサイン、発生する症状とは
漆喰が劣化してくることでさまざまなトラブルが起きることとなります。
可能であれば、そうしたトラブルが起きる前にできるだけ早く発見し、対応することで被害を最小限に抑えることが可能となります。
そのためには劣化していることで発生するサインに気づくことが重要です。
劣化してきたことで表面化してきたサインを見逃さないようにしましょう。
ここでは漆喰が劣化してくることで発生するサイン、症状などについて述べていきます。
漆喰が浮く、もしくは剥がれて内部の土が流出してしまう
棟と瓦との間を接着している漆喰が浮いてきたり剥がれてしまったりすることで、棟の内部にある土、棟を支えている土が雨風に打たれることで棟の外部に流れ出てしまうということが起こります。
瓦屋根を使っている屋根では、棟部分は屋根全体のバランスをとり、屋根を支えていく土台となる部分となります。
棟部分の土が土台から流れてしまうと「棟の形が変形する」「雨水が内部に浸入しやすくなる」という被害につながります。
こうして棟が被害を受けて安定感が低下することによって屋根のその他の部分や屋根裏、室内などにまで被害が広がる危険性があります。
軒先の下の部分に屋根から落ちてきたような土、コンクリートの欠片などがあった場合にはすでに棟の土が流出している可能性があると言えます。
瓦がズレている、抜け落ちているのが見える
瓦屋根が台風や大雨、地震といった天災が起きた際にズレてしまう、抜け落ちてしまうことがあります。
こうして瓦がズレることによって隙間ができてしまうと、その隙間の部分から棟の内部に雨水が浸入していくこととなり、さらに漆喰を劣化させていくということがあります。
漆喰が劣化していくことで瓦と漆喰との間の接着力が弱まり、さらに瓦がズレていく、抜け落ちてしまうという悪循環に陥ります。
中に入り込んでしまった雨水が漆喰を外部に流していってしまうということもあり、大部分が一気に剥がれていってしまうということもあります。
外から屋根を見た際に瓦がズレているように見える、抜け落ちているのが見えるという場合には要注意です。
すでに室内で雨漏りが発生している
漆喰の劣化しているサインにも色々とありますが、それらの中でもかなり状態が悪くなっていると言えるのが「雨漏りの発生」です。
建物の内部ですでに雨漏りが発生している、部屋内に雨水が落ちてきているという状態になっていると屋根材の下地である「ルーフィング」にも破損などのトラブルが起きている可能性が高いからです。
ルーフィングを通して雨水が室内に落ちてきているということは屋根材の下地もその時点で雨水が通過しているほど劣化しているということになるため、下地、漆喰、屋根材などすべてを交換するような大規模な工事が必要になります。
雨漏りが室内で起きているということは漆喰だけが劣化しているという状態ではなく、その他の下地や屋根材などの部位も劣化している、破損している、トラブルが起きているという可能性が高いのです。
漆喰の詰めなおし工事にかかる費用の概算とは
漆喰が劣化している、流れ出ているという場合は詰めなおしていく工事を行う必要があります。
漆喰がひび割れしている、わずかに剥がれているといった状態であれば「漆喰の詰め直し」という補修を行うこととなります。
これはその詰め直しという名前の通りに劣化している古い漆喰を取り除いて、新しい漆喰を詰めていく補修工事です。
この工事を行う場合は屋根の頂上部分にある「棟瓦」を外して工事を行う必要がないため、時間や費用はそれほどかかりません。
補修工事を行う場合は棟の漆喰については「1m」単位で計算されるのですが、詰め直し工事の場合はたいてい5000~7000円ほどとなることが多くなっています。
例えば補修する漆喰が50mであれば、かかる費用は25~35万円程度となることとなります。
また、その費用に加えて足場の組み立てや解体費用がかかりますので、合わせた費用が合計費用となってきます。
漆喰の劣化がそれほどひどくない場合にはこちらの補修工事を行うと良いでしょう。
あまりにも漆喰の劣化がひどい場合には土台から作り直すこととなるためにさらに大規模な工事となります。
まとめ
漆喰は瓦屋根を支える重要な部材です。
瓦屋根自体は耐用年数が長く設定されているのですが、漆喰は15~20年ほどの耐用年数となっているため、劣化に合わせて補修を行う必要があります。
また、耐用年数より前であっても劣化のサインが出ている場合はできるだけ早くメンテナンスしましょう。