屋根の豆知識

瓦屋根に使用されている「葺き土」について解説

日本では近年屋根材は金属屋根が増えてきていますが、昔からの瓦屋根もまだまだ多く使われています。
そんな瓦屋根を葺く際に使用されるのが「葺き土」です。
ここではそんな「葺き土」と「土葺き工法」について紹介していきたいと思います。

葺き土とは

 

葺き土とは瓦を設置していく際に、野地になじませるために使用される土のことを指しています。
葺き土を使用する際には瓦桟を使いません。
基本的には粘土に砂、わらなどを混ぜて作られており、葺き土を使って瓦屋根を設置していく工法を土葺き工法と呼んでいます。
大量の土を屋根の上で使用するということで、「断熱性が高い」「風にも強い」というメリットがありますが、「屋根が重くなる」「高い技術が必要となる」というデメリットもあります。
特に近年耐震工事で屋根を軽くするという傾向がある中、屋根が重いというのは大きなデメリットとなる場合が多く、最近ではあまり見られなくなっています。

土葺き工法について

さいたま市岩槻区にて雨漏り修理<葺き直し工事>

ここでは土を使った土葺き工法がどういったものなのかについて紹介していきます。

土葺き工法とはどういった工法なのか

日本では1900年代ごろ、昭和初期ごろまでは土葺き工法の屋根が主流となっていました。
土葺き工法は「湿式工法」とも呼ばれることがあります。
その工法は、まず屋根の上に下地となる野地板を設置していくところから準備していきます。
この野地板には昭和初期ごろは杉材のバラ板が使われることが多くありました。
屋根の上に野地板が設置できたらその上に土を敷き詰めていきます。
この土が葺き土であり、その土によって瓦屋根を固定するというのが土葺き工法なのです。

土葺き工法の種類とは

土葺き工法には「ベタ葺き」と「筋葺き」という2つの種類の工法があります。
「ベタ葺き」とは瓦の下に設置された野地板に土を全面に敷き詰めていく方法です。
この工法は下地の調整も兼ねており、全面に土があるため瓦を設置しても安定しやすく、断熱効果も高くなるという特徴があります。
ただ、使用する土が多くなるため、非常に屋根が重くなるというデメリットもあります。

「筋葺き」は屋根の「谷」と呼ばれる部分にだけ土を設置していく工法です。
最小限の土で瓦を固定していくという方法で、ベタ葺きよりも使用する土が少なくなるので、屋根の重量が軽くなるという特徴があります。

土葺き工法のメリットとデメリットについて

土葺き工法にははっきりとしたメリットとデメリットがあるため、特徴がわかりやすいものとなっています。
ここではそれらのメリットとデメリットについて紹介していきます。

✅土葺き工法のメリットとは

土葺き工法は屋根の上に大量の土を乗せて瓦屋根を固定していきます。
その重さによって瓦を安定させるというメリットがあります。
また、重みによって強風などにも強く、安定性が見込めます。
土の厚さによって断熱効果があるというのもメリットです。
夏の強い日差しも分厚い土に遮られて熱を通しません。
これらが土葺き工法のメリットとなります。

✅土葺き工法のデメリットとは

土葺き工法のもっとも大きなデメリットは「屋根が重くなる」ということです。
近年、耐震工事で行われるのは「屋根を軽くする」ということです。
地震があった際に屋根が重いとそれだけ振れ幅が大きくなり、被害が大きくなります。
また、柱や壁などにも大きな負担がかかることとなります。
屋根を軽くすることで耐震性を高めるという傾向から考えると時代に逆行している工法と言えるでしょう。

近年の土葺き工法の状況と新しく出てきた工法とは

では近年、土葺き工法はどのような状況となっているのでしょうか。
ここでは最近の土葺き工法の状況とそれに代わって出てきた工法について紹介していきます。

土葺き工法は急激に減ってきている

昔から土葺き工法は一般的に使われてきたのですが、近年はあまり見ることができなくなってきました。
それは「地震に弱い」という特徴があるためです。
大きく数を減らしたきっかけとして関東では1923年の関東大震災があります。
この時に土葺き工法の屋根が多く落下、倒壊して大きな被害がでることとなりました。
関東地方ではこれ以降土葺き工法は使われなくなりました。
関西ではそれ以降も長く使われてきたのですが、1995年の阪神淡路大震災の時に同様に大きな被害が出たため、それ以降は使用されなくなってきました。
こうして新築で土葺き工法を使うということがなくなってきたのです。

引掛桟瓦葺き工法について

こちらは土葺き工法の代わりに多く使われるようになった工法です。
棧木を下地に固定し、そこに瓦を引っ掛けて釘を打って固定します。
大量の土を使用する土葺き工法よりもはるかに屋根が軽くすることができますので、柱や壁などの構造部分を強化する必要がありません。

ポリフォーム工法について

ポリフォーム工法はポリフォームと呼ばれる接着剤を使って瓦と下地材を固定していく工法です。
もともとはハリケーンなどで被害が多く出ていたアメリカで開発された工法となっており、瓦が強風で落下しないように工夫されている工法となっています。
こちらも大量の土を使うようなことがなく、軽量化ができます。

ガイドライン工法について

こちらは土葺き工法に代わって新たに主流となってきた引掛桟瓦葺き工法に新しい基準を設けた工法となっています。
2000年以前の引掛桟瓦葺き工法では瓦4枚につき釘を1本打つ方法で瓦を桟木に固定していましたが、ガイドラインが制定されてからは瓦2枚につき釘1本を打つことが最低基準とされており、さらに最近では瓦1枚に対して釘1本を使う「全数緊結」が推奨されてきています。
また、2022年1月からは、瓦屋根の緊結方法がさらに強化され、強風対策が義務化されてきています。
こうして安全性を高めた工法が普及してきているのです。

瓦屋根から別の屋根材に葺き替えることが増えている

さいたま市大宮区にて雨漏り修理・屋根修理<瓦屋根の葺き直し>施工状況

やはり瓦屋根を使用するとどうしても屋根が重くなるため、近年では瓦屋根から別の屋根材に葺き替えるということが増えてきています。
ここではそうした葺き替えについて紹介していきます。

金属屋根が急激に増えている

瓦自体が重いという特徴があるため、屋根を軽くするために別の素材の屋根材に葺き替えることが増えています。
特に人気となっているのが金属屋根です。
昔はトタン屋根が多く使われていました。
これは「軽い」「安い」「扱いやすい」という特徴があったためです。
しかしトタンは「耐用年数が短い」「耐久性が低い」という欠点もありました。
それに代わって普及したのがガルバリウム鋼板の屋根材です。
ガルバリウム鋼板の屋根材は「軽い」「耐久性が高い」「耐用年数が長い」という特徴があるため、一気に普及していったのです。
また最近ではさらに性能を高めたエスジーエル鋼板の屋根材が増えてきています。
こうしたエスジーエル鋼板の屋根材は軽くて丈夫、耐用年数も長いという特徴があるため、瓦屋根から葺き替えられることが増えているのです。

有名な屋根材ではアイジー工業の「スーパーガルテクト」ニチハの「横暖ルーフ」などが挙げられます。

瓦屋根にこだわる場合は防災瓦を

補修工事の際やメンテナンス時に瓦屋根から金属屋根に葺き替えるということが増えている近年ですが、それでもやはり瓦屋根にこだわりたいという人もいます。
そういった場合は瓦を「防災瓦」にするという方法があります。
防災瓦は一般的な瓦と比べると軽量で防水性に優れた粘土瓦で、台風や地震にも強いという特徴があります。

防災瓦は屋根に固定する際にロックアームと呼ばれるツメ部分で瓦と瓦を引っ掛けて固定していきます。
瓦同士がこのツメによって噛みあってロックされることに加えて、桟木に釘で打ち付ける工法となりますので強風の場合でも瓦が浮き上がったり、ズレてしまうということを防いでくれます。
また、従来の瓦よりも軽いため、耐震性も向上しています。
屋根材は瓦屋根を使いたいという時にはこうした防災瓦を使うのがおすすめです。

補修工事、メンテナンス時に瓦屋根に葺き替える場合

ではここで古い瓦屋根を新しい瓦屋根に葺き替える時の流れについて紹介していきます。

既存の屋根材の撤去から設置準備まで

まずは古い屋根材をすべて撤去していくことになります。
・既存の瓦屋根を1枚ずつ外していきます。
・瓦屋根がすべて外せたら大量の葺き土を撤去していきます。
・葺き土をすべて撤去できたら、その下にある杉皮や野地板を確認していきます。
・この時、杉皮や野地板が破損していたり、腐食している場合はこれらも新しいものに交換していきます。
・それらを新しいものに交換し、その上にルーフィングを敷いていきます。
♦野地板やルーフィングが新しくなればこれだけでかなり雨漏り対策は強化されます。

瓦屋根の設置から固定まで

瓦屋根を新しく設置する際はできれば防災瓦にするのが良いでしょう。
従来の瓦屋根よりも軽量で耐久性も高くなっています。
瓦の1枚ずつが噛みあうように固定できるため安定性も高く、ステンレス製の釘で固定するため自然災害にも強くなります。
こうして瓦屋根を設置し、ステンレス製の釘で固定していきます。
これで瓦屋根の葺き替えが完了です。

金属屋根に葺き替える場合は

メンテナンス時などに金属屋根に葺き替える場合も流れ自体はあまり変わりません。
既存の瓦屋根を外し、葺き土を撤去していきます。
野地板やルーフィングを整えて、そこに金属屋根を設置していくこととなります。
最近では高性能な金属屋根製品が多く出ていますので、それらの中から選ぶと良いでしょう。

まとめ

昔から一般的に使われてきた土葺き工法ですが、関東大震災や阪神淡路大震災など大きな地震のたびに使用される数は減ってきています。
やはり大量の土と瓦屋根の重さによって屋根が重くなってしまうということが避けられているためだと言えます。
近年では葺き替え工事を行う際に軽くて丈夫な金属屋根に葺き替えるということも多くなってきています。

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