屋根の豆知識

瓦屋根に使用されている「葺き土」について解説

建物の屋根を形成するメイン部分である屋根材については伝統的な瓦は減ってきており、軽い屋根材である金属屋根が増えてきていますが、昔からの瓦屋根もまだまだ多く使われています。
そんな瓦屋根を葺く際に使用されるのが「葺き土」です。
ここではそんな「葺き土」と「土葺き工法」について紹介していきたいと思います。

葺き土とはどういったものか

「葺き土」というものは近頃あまり見ることも聞くこともないかもしれないため、ピンとこない人が多いかもしれません。
これはその名前の通りに「土」が使用されています。
屋根の上に瓦を葺く、設置するときに野地板になじませるように使用する土です。
この土は粘土と砂、藁などを混ぜて作り出すもので、それほど高額なものではありません。
ただ、中には粘土に石灰を混ぜて使用する高級なものもありました。
この葺き土を使って瓦屋根を設置していくような方法が「土葺き」工法です。

土葺き工法の固定の仕方について

さいたま市岩槻区にて雨漏り修理<葺き直し工事>

土瓦を屋根に設置していく、葺いていくのには土を使う方法と、土を使わない方法とがあります。土を使わないで瓦を固定する「引掛桟敷瓦葺き工法」では、瓦桟と呼ばれる部位を屋根の下地の上に打ち付けます。
そうして打ち付けた瓦桟に瓦を引っ掛けることによって設置していくこととなります。
土葺き工法の時には屋根の上で粘土に砂、わらなどを混ぜた土である葺き土を使って行きます。

葺き土の作り方について

葺き土の主原料となるのは赤土です。
この葺き土はどんな土でも良いというわけではなく、優良な土を使うということが断熱性や防音性を向上させることへとつながります。
また、こうした優秀な土は建物の壁土としても使用されることもあります。
こうした良い土は良い葺き土や壁土として使用されることとなり、土の性能が良いことこそが建物を丈夫にして耐用年数を長くすることにもつながることとなります。
良い土を作るには、長い時間と多くの手間がかかります。
特にどこの赤土でなければならないという決まりはなく、その地域の赤土を使われることが多くなっています。
この赤土をそのまま使うとひび割れすることが多いので、このまま使うことはありません。
赤土に「砂」「粘土」「藁すさ」「水」を加えて混ぜていきます。
この藁すさは関東では「つた」と呼ばれることがあるものです。
古くなった藁やむしろを小さく切り、叩いた上で水に漬け込んで柔らかくしたものです。
これらを混ぜたものを寝かせていると発酵していくことによって藁すさが柔らかくなっていくのです。
何度も土をひっくり返しながら空気に触れさせていき、少しずつ水と藁すさを足しながら何か月も寝かせます。
こうした土は屋根で使う葺き土や壁に使う壁土になっていくのですが、屋根で使う場合は水と藁すさが少なめの硬い土、壁土には水と藁すさが多めの柔らかい土を使います。

土葺き工法のメリットとデメリットについて

土葺き工法にははっきりとしたメリットとデメリットがあるため、特徴がわかりやすいものとなっています。
ここではそれらのメリットとデメリットについて紹介していきます。

✅土葺き工法のメリットとは

土を大量に屋根にのせることで重くなる屋根を支えなければならないために柱や壁もそれに耐えることができるだけの頑丈なものとなっており、建物自体の安定性が高いということがあります。
土を使って固定しているということで強風の場合でも瓦が飛んでいってしまうことが少なく、落下もしにくいということがあります。
また、分厚い土があることで夏の強い日差しであっても防いでくれることで室内の温度が上がるのを抑えてくれます。
こうして断熱性が高くなるということに加えて保温性もあるので、冬は室内の暖かい温度をキープできるというメリットもあります。
さらにこちらの工法では屋根の野地板に土をのせて瓦を設置していますので、瓦を雨水が通過してしまっても土が水を吸収することですぐに雨漏りにはつながらないこともありますし、雨音が響かないことも長所となっています。
こういったことが土葺き工法のメリットと言えます。

✅土葺き工法のデメリットとは

メリットがある葺き土を使う土葺き工法ですが、最近急激に使用が減ってきているのはデメリット部分が大きいためとされています。
その最大のデメリットがなんといっても「屋根が重くなる」ということです。
大量に土を使うことによって屋根が重くなり、そこにさらに重い瓦をのせていくことで屋根がかなり重くなってしまいます。
屋根が重くなることで地震の時には建物が大きく揺れることとなり、壁や柱に大きな負荷がかかってしまいます。
屋根を軽くすることが求められている近年の耐震性能のことを考えると時代に逆行している工法だと言えるかもしれません。

土葺き工法の2つの種類について

土葺き工法には2種類の瓦の設置の仕方があります。
ベタ葺き」は土を乗せていくことによって野地板のバランスを調整するという機能も兼ねているという特徴があり、板屋根の全面に土を広く敷いて、その土の上に瓦を置いていくことによって安定感を増していきます。
それに対して「筋葺き」という工法については屋根の全面的に土を敷いていくのではなく、「谷」と呼ばれる部分のみに土を設置していくという工法です。

太陽光パネルは土葺き屋根で使用できるか

土葺き工法の屋根の時に太陽光パネルが設置できるかどうかについては、屋根の状態や太陽光パネルのメーカーによります。
もちろん施工されている屋根もありますが、絶対にできるというわけではないのです。
瓦がだいぶ傷んでいる場合、葺き土が劣化している場合、パネルのメーカーが土葺き工法に対応していない場合などの時には利用することはできません。
どうしても太陽光パネルを使用したいという場合は、土葺き工法から他の工法に葺き替えをする必要性があります。
また、土葺き工法を行っている場合にはすでに屋根が重くなっているのですが、そこに太陽光パネルを設置することでさらに重量が増加してしまい、危険な状態となります。
少しでも重さをカットするためにはパネルを設置する場所の土や瓦を取り除くという方法もあります。

最近では土葺き工法は減少してきている

ではこの土葺き工法は最近どのように使われてきているのでしょうか。
結論から言えば土葺き工法の使用は減ってきています。
ここではなぜ土葺き工法が減ってきたのか、土葺き工法の代わりに使用されるようになってきている瓦の設置工法を述べます。

土葺き工法は最近急激に減ってきている

日本では1900年前後には土葺き工法を使って建物の屋根に瓦を固定していくというのが主流でした。
ただ、それから100年以上経った最近では新しく建設される建物ではほとんど見られなくなってきています。
土葺き工法が減ってきた最大の理由は「地震に弱い」という弱点があるためです。
大きく使用が減ってきているきっかけが関東と関西でそれぞれ存在しています。
まず関東では1923年の関東大震災が現象のきっかけとなっています。
この時に関東地方にあった建物は土葺き工法の屋根が圧倒的に多く、地震があった際に屋根の重さで遠心力が発動し屋根が大きく横揺れすることとなりました。
重い屋根が大きく揺れることで柱や壁に大きな負荷がかかり、建物が倒壊するという被害が大量にでることとなりました。
関東地方ではこの関東大震災があってから以降は新しく建てる建物の屋根で瓦屋根を使用する場合でも土葺き工法は使われることはなくなりました。

関西では関東で使用されなくなってからも長く使われてきたのですが、1995年1月に発生した阪神淡路大震災の際に関東大震災と同様に建物に大きな被害が出ました。
建物が崩落するということが多く起こり、被害が甚大化したためにこの地震以降は使用されなくなっていきました。
こうして日本全国で新築の建物で瓦屋根を使用する際であっても土葺き工法が選ばれるということは減ってきたのです。

ガイドライン工法について

最近ではこの工法でさらに安全性能を高めた「ガイドライン」が設定されており、釘1本について瓦1枚を固定するような全数緊結が推奨されてきています。
この瓦の止め方については初めのころは瓦4枚を固定するのに釘が1本だったのですが、それが瓦2本を固定するために釘を1本と変わってきており、それが瓦1枚に対して釘が1本というように変化してきたものです。
強風対策をとった上で施工するということが義務化されてきているのです。
ガイドライン工法とは業界団体が制定した瓦屋根の安全性を改善するための規定です。
国や地方公共団体が法令化しているものではなく、業界団体が制定した規定ということもあって法的な強制力はありません。
瓦屋根についての技術の基準、設計方法、施工方法、診断方法、改修方法について具体的な解説がなされています。
令和元年の房総半島を襲った台風によっての屋根被害調査によると、ガイドライン工法に従って施工された屋根材は被害がかなり抑えられていたことがわかっています。
このガイドライン工法では震度7の地震にも耐えうることができます。

葺き土を使っている瓦屋根から別の素材の屋根材に葺き替えることが増えている

やはり葺き土を使用した瓦屋根は近年屋根が重くなるのが嫌がられているために減ってきています。
そのため、瓦の補修工事や交換工事をする際にそのタイミングで他の素材の屋根材に変えてしまうという葺き替え工事を行うことが増加傾向にあります。
こうして屋根材を交換する際に特に選ばれることが多い屋根材が金属屋根です。
昔は金属屋根と言えばトタン屋根が多く使われていました。
これはトタンという素材が「軽い」「安い」「扱いやすい」などのメリットがあったためです。
しかしトタンという素材は「耐用年数が短い」「耐久性が低い」という大きな欠点もありました。

まとめ

昔から一般的に使われてきた土葺き工法ですが、関東大震災や阪神淡路大震災など大きな地震のたびに使用される数は減ってきています。
やはりこの工法を使用するときには屋根の上で重い土を大量に使うということに加えて、瓦自体の重さが加えられていくこととなるので、屋根が重くなってしまうということが避けられているためだと言えます。
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